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冷たい世界にも、優しさがあった。
そのことに気が付いていなかっただけで、自分の周りには優しさが溢れかえっていた。
それに今気がつけたのはきっと、目の前にいる“彼”のお陰なのだろう。
*
「……はぁ」
「なんでため息つくのさ」
「……お前さぁ、…なんで覚えてるわけ」
「せっかく…」とか、彼お得意の説教が始まるのを、心なしか待ち構えていた。
それがこうして見られること、聞けることが嬉しいからなのだろうか。
それにしてもいい加減返事を返さないことには、彼の逆鱗に触れてしまう。
それだけは何としても避けたい。
「いいじゃん。これから、始めれば」
「…は」
「過去は…全部リセットするんでしょ」
「……そう、だな」
「とりあえずメアド交換!」とか間抜けた事を言ってみせると、彼は呆れた顔をしながらもレシートの裏にメールアドレスを書いて渡してくれた。
それを受け取り、足取り軽くコンビニを後にした。
次、会う約束はしなかった。
ここで会えたことが奇跡なのだと、偶然ではなく必然なのだとしてみれば、今まで会わなかったことに理由があるのだと思えた。
*
世界は、冷たかった。
今でも時々冷たく感じることはあるけれど、そんなものに負けてはいられない。
ただ今は、幸せに向けて歩いていくだけだ。
彼と、共に。
― 想い出は弱さも強さも 景色も塗り替えてゆくよ
→End.
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