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さて、一方ここは、ヴェルニカ城の一室。
“花園の間”
部屋の窓辺に二つの影。
一つは、よく蓄えた大きな腹に笑うと揺れる豊かな黒髭。豪華な衣装に身を包み、頭には質素な王冠を輝かせている。まさしく、王と呼ぶに相応しい男だ。
もう一つは、美しい金髪で頭を包み、目は碧眼、肌は真珠のように白い。煌びやかなドレスを身にまとい、レースのマントを背中に広げている少女だ。
二人共窓の外を眺めている。
「そんなに心配か?クレア。」
男が、少女に向かって言った。
クレアと呼ばれた少女は、眉をひそめ不安そうな表情で男に振り返った。クレア。真の名をクレア・ロ・アン・レイクーンという。ヴェルニカの姫で、側にいるこの男が、クレアの父、ロドリク・ア・ヴェン・レイクーン王である。
「だって、お父様。最近のお母様ったら、兵まで出してみんなに絡んでくるんだもの…」
怒ったように、しかし、少し不安そうにクレアは言った。
少女の言葉に、お父様と呼ばれた男が笑った。
「ふぁっふぁっふぁっ!確かに、我が妃は、おてんばじゃからのう。」
「それ、おてんばだけじゃ済まされないですよ。」
クレアが頬を膨らませて言った。
すると、部屋の扉が激しい音をたてて開いた。
そこから、勢い良く二人の少年が転がり込んで来た。
顔は瓜二つ。服装も全く同じ。違うといったら、片方が眼鏡をかけている事ぐらいだった。歳は、十代半ばといったところだ。
「ダグリス!ラグリス!」
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