愛するモノには沢山の桜を口に詰めてあげる

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『ギャーギャーーー…。』 その甲高い音は、静寂の空を飛び回るカラスの羽ばたきと鳴き声。 落ち葉が風に飛ばされて目の前をぐるぐると回っている。 何か頭上に違和感を感じた。 誰かに睨まれているような視線とギシギシと音がするのだ。 頭上を凝視すると次第に桜の太い枝にロープで吊るされる物体があることに気がついた。 ちょうど一メートルぐらいの高さだろう…。 時々唸る風に煽られて、ギシギシと重量感のある振り子のように揺れている。 ペチャ…ペチャ…。 吊るされた物体から滴る水滴が額に垂れた。 海翔は直ぐ様、右手で額を拭く。 生ぬるい…。 うっすらと手に付いた液体からは、理科の実験に使うアンモニアの臭いが鼻腔を刺激する。
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