愛するモノには沢山の桜を口に詰めてあげる

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ザァ…ザァ…ザァ。 後方から落ち葉や枝を踏みながら近づいてくる足音、一歩二歩確実に近くなる。 通りすがりの人間だろうか…それなら助けてくれるはず。 『あっ…すみません警察と救急車を呼んでもらえませんか…どうやら無理心中のような…ノデデ…す。』 いきなり口が動かなくなった。 『ネェ…サクラノキニハサクランボガタクサン。』 幼くて冷たい声が一瞬で耳から足の指先まで冷気が流れていくのを感じた。 あの時に聞いたのは、風が唸る音なんかじゃなかった…紛れもなく人の声。 動けよ…動いてくれよ…お願いだから…頼む。 恐怖が倍増し身体が硬直して動かそうと意識しても動かない。 ザァ…ザァ…ザァ。 ゆっくりと不気味な足音を鳴らし近づいてくる。 『ネェ…アナ…タモサ…クラノサクランボニナル…』 『うぅ…。』 首に圧迫感を感じたと思ったら意識が朦朧としてきた。 このまま…俺は死ぬのだろうか、マラソン大会で優勝したかったなぁ…。
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