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「ま、そんな急に俺を好きになるはずはないし、気長に待つよ。とりあえず、俺の気持ちを知って欲しかっただけ」
少し淋しそうな顔で言いながら、天川は膝の止血をしてくれた。
「ぁ…ありが…」
止血をしてくれた天川にお礼を言おうとしたその時だった
『ワシの湯飲みがぁぁぁぁぁぁっ!!!』
なんでこうもタイミングがよいのだろうか。
物凄い叫び声が聞こえ、お礼の言葉がさえぎられてしまった。だが、異常ではない叫び声にビックリしたのは言うまでもない。
「え、え??い、今の部長の悲鳴みたいなの何!?」
「ん…?あー…そういや、さっき割れた破片の中に部長愛用の湯飲みが転がってたような…」
のんびりと言う天川に、私は青ざめると同時に、焦りと泣きが襲ってきた。
「なんだって!!?ちょっ、それを早く言いなさいよ!!あぁぁ…怒られる…。い、いや、まだ割れたと断定した訳でもないし…いやいやいやさっきの悲鳴からすると…――」
確信したくないが目に浮かぶ光景が嫌でもちらつき固まってしまう。
まさかね。大丈夫だよね?なんて天川に目線で訴えたのだが、更に追い討ちをかけられる言葉。
「大丈夫。俺の靴がトドメをさしただけだから」
「なお悪いわーーーッ!!!」
目に浮かんだ光景大確定につっこまずにはいられない。
だが、今は天川につっこんでいる暇はないと我に変える。とにかく謝りにいかねばと椅子から立ち上がった。
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