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「そんな思い詰めた顔しなくても、俺も謝りにいくし。だからそんな泣きそうな顔をするな」
安心させるかのように手を握られて歩き始めた。
「俺もって…何で軽く上から目線なのさ…。大半の残骸は私のせいだけど、部長のは私がした訳じゃないのに…――」
「まぁまぁ。とりあえず、部長に文句言われない借りがあるから大丈夫。あと、雨宮の嫌いなモノを退治してあげたんだから、どうせ怒られるんなら二人一緒って事で」
「え゙っ……な、なんでアレがバレてんの?!」
「そりゃ、俺の好きな人の事だから分かるさ」
そう言って不敵に笑う。
天川を敵にしたくないと思うと共に心なしか、なんて頼もしいヤツだと思った。
握られた手のひらの暖かさの安心感。
本当、天川が来てなかったらどうなっていたのだろう。一人で部長にこってりどころじゃないくらい怒られていただろう。考えるだけで身震いが起きる。
不安だらけの私の雰囲気に気付いたのか、不敵に笑うけど、大丈夫だと優しい笑みをくれる。
そんな笑みを向けられて心臓が飛び跳ねるんじゃないかと思う程の感覚といつもと違う鼓動の音の速さ。
「どうした?」
「な、なんでもありませんっ!!」
今、自分がどんな顔をしているのか分かってはいても分からない振りをする。
だって、そんな君に恋するまで、あと5秒前の事だったのだから――
END
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