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相変わらず何をするにも早い男である。先程昼食を食べたかと思えばものの数分で食べ終えている。
「オーラ、ねぇ…。嫉妬ってやつか?やっぱりお前変わったよ」
頬杖をしながら飲み掛けのコーヒーを最後まで飲むと、苦笑しながら松原はそう言った。
「褒めるな気色悪い。不愉快料はデザートで許してやってもいいぞ」
いやいや、褒めてないし。なんてツッコミをいれようかとは思ったが、あえてスルーしておくことにした。
「うわー、昔から手厳しことで。デザートって、どうせいつものだろ」
「当たり前だ。んじゃ、よろしく」
はよ行けと、お茶をすすりながらヒラヒラと手を振る。
「まったく、仕方ないな」と苦笑しながら言うと、席を立ち、親友に見送られ食券売り場へと向かいながら松原は思った。
親友は、やはり変わったと。
前までは、人を好きになるとかもなければ、あんな柔らかで楽しそうな感情をだしたりはしなかった。
その友人を変えてくれたのは他の誰でもない、雨宮さんだ。
あの時、彼女が優しく差しのべてくれたことがきっかけだった。
普通の人だったら何気ない事だろうが、天川は社内の女子に嫌われていたから違うのだ。だから、偏見も持たずに差しのべた雨宮のほんの些細なことが天川にはビックリしたと同時に嬉しかったのだ。
親友が好きになった相手が雨宮さんで本当に良かったと心から思い、今はデザートを待っている親友の元へと向かった。
二人が結婚する時の為に、スピーチの文章考えなきゃな、とポツリと呟きながら…―――
END
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