プロローグ

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手記を閉じて 私はごろりと横になった 麗らかな春の日差しが心地よい それに加えて草が風になびき、木がざわめく音もなんとも心地よいものだ 此処はまさに私にぴったりの場所と言える 至福の場所 私が通う軍学校の中にありながら 此処には口うるさい教官達すら来ない 素晴らしい場所だ 此処で私はいつも放課後まで好きな本を読んで 手記を書く作業に没頭する 量的にそろそろ小説でも書けそうだな…… 今度原稿にでも起こしてみるか そう思っていると 《ザッザッ……》 私の楽園に侵入者が現れたようだ もしかすると教官かもしれない 今は授業の真っ最中なので見つかると 自由時間を愛する私はこっぴどく叱られた後、懲罰房にでも叩き込まれるに違いない 早い話、私はサボってばかりなので見つかると余程の理由がないかぎり 謝る程度では許していただけないのだ 素早く身を隠して辺りを伺う 学校の用務員を抱き込んでここら辺を私物化している私には隠れる場所にも心当たりがたくさんある 初見の人間に見つかるほど私も馬鹿ではないのだ 《ザッザッ……》 足音が徐々に近くなってくる
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