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「……どうしようかな」
またぽつり
帽子を目深くかぶり
マントと、胸甲を身につけているため体格は良くわからないが声と長い髪型からして女性なのであろう
そんな彼女が何をしようと言うのか?
仮に私が知らぬ間に見つかってしまっていたとしても躊躇いを見せ、なおかつ決断を迷うようなことは無いだろう
どのみち私の弁舌ではどう頑張っても彼女を納得させ得るだけの理由をでっち上げることもできないし、まだ言い訳すらしてない
つまりはなにか別の理由があるのだろう
まさかお手洗いとか言わないよな……
なんてあり得ないことを考えながら私は事の顛末を見守っていた
「ちょっとだけならいいだろう……」
そう言うと彼女はその場に腰を降ろし
帽子を取った
私はまた度肝を抜かれた
私のオアシスに入ってきた人物
それは風紀維持部隊の若き隊長
ベルヘェクト・A・ホーエンハイム曹長だった
規則に厳しく
明晰な頭脳と高貴な家柄、美しい容姿を備えた完璧な女性
ちなみに愛称はベルフィらしい
まさかそんな彼女が此処に現れるとは……
噂や普段欠伸を噛み殺しながら整列している時に見る彼女とは思いもつかない様子だった
恐怖の対象、鉄の女と呼ばれる彼女が
まるで町中の女の子のように
草むらに腰を降ろし、春先に吹く風に髪を遊ばせていた
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