3人が本棚に入れています
本棚に追加
「あのね、シャルト君は知ってる?品評会の事。」
祭壇を右手に、シャルトが持ってきてくれた椅子に座り話し始める。シャルトは立ったままだ。さすが僧侶…しかし、ち、近い。
「あぁ、明日開催される国営のスイーツ品評会ですね。僕はこちらが本職なので参加の予定はありませんが…」
「あのね、課題スイーツが本番まで未発表なの。それで、ちょっと困っちゃって、お祈りに来たの。」
「そうでしたか。それでそんな沈んだ顔をしていたんですね。じゃあ、僕が神父を勤めます。ころんさん、膝をついて祭壇の前に。」
「う、うん。」
椅子から立ち、端に寄せると、ころんは膝をついて祭壇の前で祈りの手を握った。
「『迷える子羊よ、祈りなさい。その身に、心に、神の祝福があらん事を。大天使ミカエルよ、この迷いし心に貴方の御力を。』」
ロザリオを掲げるシャルトは、まるで神の使いの様だった。一方、ころんは目を閉じ、神妙に…
『イチゴタルトになりますように!イチゴタルトになりますように!イチゴタルトになりますようにいぃぃぃ!』
祈っていた。
「さぁ、ころんさん、顔を上げて下さい。神はきっと、貴女の願いを聞き届けて下さいますよ。」
「うん、ありがとう、シャルトく…」
肩に手を置かれ、ころんが顔を上げると、目の前には膝をついたシャルトの顔が…身長差から、やや上に。
近い。
近い近い。
さすがに今はかっこいいと思ってしまう。不謹慎だよ、ね、ここ教会だからね。それに、お互い他意は無いからね。
「…学校ではお互い制服でしたから、不思議な感じがしますね。今日は髪も下ろされてますし…そちらの方が可愛らしいですよ。ワンピースも、よく似合ってます。」
…まさか、タラシか…?
最初のコメントを投稿しよう!