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「毎日毎日、何でこうも平和なんだ?」
いつものように鏡の前に立ち、ネクタイを締める。
こないだ、あまりにも変わらない日常に嫌気がさし、ネクタイを思いっ切り締め付けてみた。
咳き込んだ。
俺は最近、少しおかしくなってきているのかもしれない。
ネクタイを締め終え、髪をとかす。
何の特徴もない髪型、顔、体型……。
職業上、髪型には清潔感が問われるため、無難な短髪にして色は真っ黒のまま。
正直、とかすまでもないのだが……。
目は一重で大きさも一般的。
鼻は高くもなく、低くもなく、大きくもなく。
唇はやや薄めだが、これまた一般的。
身長は百七十二センチで体重は六十ジャスト。
今年のはじめに六十五まで増えたときには、さすがに焦ってダイエットした。
毎日、正方形のこの部屋の片隅にある、全身が映り込む鏡と向き合う度、自分でもわかるくらいに何の特徴もない俺。
そんな俺が太ると、ただのデブ扱いされるだけなのは、過去の経験から学んでいる。
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