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手に握ったクシをすぐ右横の棚に置き、左の壁に掛けてある上着を羽織る。
この上着を着る度、言いようのない虚無感に襲われる。
両胸にあるポケットにそれぞれ携帯、手帳を入れる。
最後に下から胸の位置までファスナーをして準備完了。
この薄緑の上着、センスないんだよな。
腕時計を付け、財布と家の鍵、マイカーの鍵をスラックスのポケットの定位置に入れて玄関へ。
五歩も進めば玄関の、何とも優しい造りの部屋。
今日はテーブルに足をぶつけずに済んだか。
「さて、いってきます」
お決まりの独り言を呟きながら靴を履き、左手をポケットに。
金属音が響く玄関の扉を開いて、左手に握った鍵でロックをかける。
変わらない十五段の階段を降り、マイカーに乗る。
さて、行きますか。
俺の朝は、こうして始まって出掛けていく。
ここまでのことを誰かに話したとすれば、何の変哲もない毎日に興味を持たず、飽き飽きするだろう。
実際自分でもそうなのだ。
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