発端

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会社まではおよそ十五分あれば到着する。 雨の日にはそれより少し遅くなってしまうが、今日ほど見事な晴れならば、何の支障もない。 五分ほど走った辺りで右折する。 そのときだった。 けたたましい音と共に、マイカーが勢いを失い、遂には止まってしまった。 「ちっ……またか」 チェーンが外れてしまった。 マイカー、七年以上乗り続けている自転車だ。かなりガタがきている。 ベルすら鳴らないのだ。 おかげでこないだ女子高生に横から自転車で衝突された。 それ以来、チェーンが外れてしまうようになった。 携帯をいじりながら突っ込んできたその女子高生は、ぶつかってきた反動で自転車から落ちて思いっ切り尻餅をついた。 そのときに、ささやかな幸せを噛み締めたのだが、あまり深く語るつもりはない。 その女子高生は謝ることもなく、そそくさと自転車を起こして去っていった。 自転車に足を挟まれ動けない俺を後目に。 それ以前は稀にすれ違っていたが、その日以来姿を見かけていない。
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