発端

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あと三本、電柱を過ぎれば会社に到着だ。 あと二本。 ここである異変に気付いた。 「また外れるか?」 チェーンが窮屈そうな音を、ガラギリガラと上げ始めた。 ここなら外れたところで、目的地は目の前だ。 来るなら来い、外れるなら外れろ。そう思いながらも到着。 いつも停める場所には、見慣れない自転車が停めてある。 おそらく誰かが勝手に停めたのだろう。 そこから二台分ほどのスペースを空け、片足スタンドを蹴り下ろす。 ここからだ……。 いよいよ憂鬱な時間の始まりだ。 去年までなら、こんなに憂鬱な気持ちにはならなかったのにな……。 大きく息を吐き出しながら、戸を開いた。 さあ、一日の中でも一番嫌な時間の始まりだ。 出来る限り何も考えず、ただ黙々と仕事をこなして、時間がきたならさっさと帰ろう。 思うことはそればかり。
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