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その中に彼女もいた
セイレーンである彼女
シルフィーネが
初夏真っ盛りの大通り
雨期も過ぎ、今宵も人々が娯楽の為に行き交うそこ
シルフィーネは、純白の衣装を身に纏い、女神の噴水の前で1人立っていた
セイレーン特有の長い白桃色の髪を煌びやかな髪飾りで結い上げ、緑色の瞳を通り過ぎていく人々に向ける
産まれたてのような、白磁の肌は、日差しでこんがり焼けた人々のなかではよくめだっていた
顔のどのパーツを見ても、何一つ欠点がない美貌は、行き交う人々の視線を集めていた
女性から見ても、まるで神様に贔屓されているかと思うほど、羨ましい容姿だった
シルフィーネは、チラリと眼前の塔の巨大時計を見た
もうすぐで21刻
あと何十秒もすれば深夜を告げる鐘が鳴り響くであろう
歌い出しの合図は、その鐘の音
今まで銅像のように動かなかったシルフィーネは、しなやかな細腕を夜空へとかざし、その時を待った
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