第一章

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「……ふぅ」 五分くらい経ってやっと動悸が治まってきた。 「……もう大丈夫か?」 後ろにいた少年は、落ち着くまで待っていてくれたらしい。 「うん、大丈夫よ」 今出来る限りの笑顔で対応する。 「それで、どうしたの?」 一応、少しだけ警戒して会話をする。こんな時間帯だし何かあったら嫌だし。 「ああ、道を聞きたかったんだ」 少年は今までのことなど眼中にないのか、私の顔を見て話す。 あんなに顔近かったのに動じないなんて、私って魅力ないのかしら。 「それで、どこに行きたかったの?」 「この街で古い建築物。五年や十年じゃなくて、百年単位の建物があったらベスト。無ければ数十年物で」 「うーん」 この街は二・三年前に色々と建物が建ったりしていたので、古い建物は今では数えるくらいしかない。 「そうね……近くにあるのは、ここから左に行ったところにある三坂神社かしら」 「そうか、ありがと」 と言って、走り出した。 「え、ちょっとまって……」 と、言ってる間に、少年は闇の彼方だった。 名前聞くの、忘れてた。 少しだけ残念と思い、何を考えているんだと思う自分がいた。 ……さっさと家に帰りましょう。 アスナside end
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