捕食の刻(とき)

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いつもの変わらぬ朝焼けが美しくが焼く、県北部の沿岸部にあるとある岸壁。 暁に染まる岸壁を、一人の男性が歩いている。 渋い顔つきの、いかにも初老と言った感じの男性は。 その手に自分の身の丈ほどはある竿を持ち、もう一方には大きなクーラーボックスの存在も見て取れる。 頭に被った帽子には、色とりどりのルアーが飾られ、着込んだベストと相俟っていい味を醸し出している。 「あ、どうも、磯辺さん」 「あぁ、谷川さん。どうも」 いつものポイントに到着すると、そこには既に先客の姿があった。 竿をたらし、キャンプ等で使われるコンパクトな折りたたみ式の椅子に腰を下ろしていたその先客は、近づいてみれば見知った顔であった。 互いに顔は知っている、だから挨拶も軽いもので済ませる。 「今日は調子がいいような気がするんで、負けませんよ」 「いやいや、こちらこそ」 磯辺の横に陣を構えると、急いで準備を整えルアーを海に投げ入れる。 暁に染まる岸壁に、二つの影が映し出されていた。
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