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｢ごめんなさい……｣
黒く塗りつぶされていく意識の中、俺は自分に投げかけられたであろう言葉を無意識に拾った。
｢こうするしか、なかったの……｣
叩きつけるような雨の続く公園の真ん中、俺はいつの間にか彼女に上半身を抱きかかえられ、目の前には彼女の顔があった。
｢…だって…っ…こうするしか……｣
泣きながら弁解をする彼女の顔が、霞んだ視界に映る。
｢…なん……で………?｣
俺は自分の腹に痛みを通り越した冷たい違和感を不快に思いながら、そう声を絞り出した。
そして俺は、ここまできてやっと自分がどんな状況におかれたのかを理解した。
"刺されたのだ"、彼女に……。
｢もう……やだよ……こんなの……｣
そう呟くと彼女は俺の体を胸に抱き寄せ、嗚咽を漏らしながら涙を流した。
彼女の涙が雨混じりに俺の頬を伝っていくのがわかる。
その時にはもう俺の目は黒一色しか映さなくなってしまっていた。
徐々に去り行く意識の中、俺は必死に思考に巡らせた。
なぜ俺は彼女に殺されたのか。
なぜ彼女は自分が刺した相手に向かって涙を流しながら謝り続けているのか。
朦朧とする意識の中ではそれを考えるのが精一杯だった。
何十分……いや、実際には十秒くらいしかたっていないのだろう、俺の意識は水の中に垂らした墨汁のように黒に支配されていった。
そして俺はこの世界での意識を閉じた。
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