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春の日
俺は悪い夢を見た後、よく自分の体に塩を捲き、そして家の入り口の両サイドにそれを盛る。
「いい年こいて夢くらいでビビんなよ」とか、「まだそんな迷信信じてんのかよ」とか思っている奴は好きなだけそう思っていろ、笑ってろ。
俺自身はとしては、これが我が家での悪夢に対する唯一の対抗策であり、日本古来の伝統的行動だとも思っている。
そして今日、悪夢を見てしまった俺が朝最初にするべき行動でもある。
だが起きて視界がハッキリとした目で見た光景が、俺のこれから起こすべき行動をすべて忘れさせた。
いつもとは違うベッドの感触、独特の薬品の混じったような臭い、ベッドを囲うように設置されているカーテン、横には花with花瓶。
最早語るまでもないだろう。
"俺は俺の知らない間に病院のベッドに寝かされていた"。
なぜって?
こっちが聞きたい。
目が覚めたら病院のベッドで寝てましたー………なんてシチュエーション誰が想定できるであろうか!!
しかし入院する理由としてはそう多くあるわけではない。
どこか大怪我でもしたのだろうか?
別に体はどこもいたくな…
「痛っ………」
…いと思った瞬間、突然腰に激痛がはしった。
上着を捲って見ると、腰に腹巻き程度の包帯が巻かれていた。
「なんだこれ………」
考えようと頭に手をやると違和感、やはりそこにもはちまち程度の包帯が巻かれていた。
「頭にもかよ……これ相当まずかったんじゃないか?」
自分がおかれている状況を把握しつつ、病院のベッドで寝かされる前の記憶を探ってみる。
…………ダメだ、全く思い出せない。
そもそも腰と頭に怪我っ!?この両方を達成できるシチュエーションを俺は知らん。
ぶつくさいいながら考えていると……
ガラッ…
不意に病室のドアが開いた。
「あっ………」
そう声を漏らして入ってきたのは、俺と同じ高校生くらいの女の子だった。
「…………ん?」
はて?記憶が混雑しているのか……俺はこの女の子を知っているのだが、思い出せない………。
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