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出てきた会長は翔を見た後、僕を一瞬見て、また翔を見る。
「新しく入った藤堂莉音くんです。入学式体調が悪くなって退席したので会長の顔知らないと思って…」
「あぁ…あの…」
すると会長は不躾に僕を下から上へとみていく。
人通り僕を見た後、会長は僕に手を出す。
「俺は瑛翔。いちよう生徒会長をしている。何かわからない事があったら言ってくれて構わない」
『はい』
僕はそういい、会長に出された手を握る。
すこし握ったあと手を離し、会長を見ると、会長は僕の顔をじっと見ていた。
『僕の顔に何か?』
そう首をかしげて聞けば会長は…
「お前眼鏡ないほうが可愛いんじゃないか?」
そう言って僕の眼鏡を取ろうとした。
その行動に僕だけでなく、横にいた翔も驚く。
僕は咄嗟に眼鏡を取ろうとする会長の手をはじき落としてしまった。
「っ…」
乾いた音が響く。
会長は驚いたように目を見開いて固まっていた。
そんな会長に僕は俯く。
『…すみません…僕眼鏡ないと何も見えないんです…』
「そうか…悪かった…」
さっきより低い会長の声に僕は何も言えなかった。
重たい空気が流れる中、翔が声を上げる。
「あ!会長僕たちご飯まだなんで戻りますね」
「わかった」
「忙しいなか、ありがとうございました。」
それから翔は僕の腕を引っ張るようにしてその場から歩き出した。
僕はただ会長の手をたたき落とした時、一瞬見せた会長の悲しそうな顔が忘れられなかった。
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