《 1 》

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亮次が走って何処かに行ってしまったのかは謎だったけど、僕はとりあえず指定された席に座った。 案外、入学式は早く始まり、順調にすすんだ。 特にやる事のない僕達はひたすら話を聞くだけ、周りの数人は既に寝ている。 僕も流石に眠くなり始めて瞼を落としかけたときだった。 〈次は日向学院、理事長、神崎 治様からのお話です。〉 え? 司会が言った名前に僕の睡魔は吹き飛んだ。 僕はゆっくり視線を上げて舞台に上がってきた人物を見る。 今『神崎』って… 違う神崎だよね? 自分が聞いた名前を否定したかったが、僕の目に映ったのは自分もよく知る人物だった。 『な…んで…』 呟くように言った僕に周りの生徒がキョロキョロと僕のことを怪訝そうに見てくる。 だけど今の僕にはそんなこと関係ない。 神崎 治(かんざき おさむ) 白髪交じりで釣り目めの威厳そうな男の人。 そして僕を… 『!!っ!』 僕は勢い良く立ち上がる。そのせいで座っていたパイプイスは派手な音をたててひっくりかえった。 一気に静まり返る会場。 僕はそんな中、ただ舞台にたつ人を睨みつけていた。 舞台に立つ人物は急に立ち上がった僕を怪訝そう見つめる。 こいつさえ…こいつさえ… 僕はポッケに手を入れて忍ばせていたナイフで指先を切る。 ピリッとした痛みが伴い切れた事がわかると僕はゆっくり手をポッケから出そうとする。 こいつさえ、死ねば… 「君、どうしたの?体調でも悪い?」 あと少しで手がポッケから出るというところで横から誰かが僕の肩に手を置いた。 『…邪魔…』 僕はその人物を見ることなく、その人物に「力」を使おうとしたが… 「使う相手を間違えるんだじゃない…」 『!?あっ…』 耳元で囁かれて言葉と共に、誰にも見えないように首に何かを打ち込まれた。 その瞬間、僕の体は急に力が抜け、立っていられなくなった。 倒れそうになる僕を横にいた人物がさせて抱きあげる。 「すみません。この子調子わかるかった見たいで、式つづけてください」 『…はなし…て…』 だんだん意識が朦朧としてきた中、僕は抵抗する。 だって目の前にあいつがいるのに!! 『…つば…き…のばか…』 僕の意識はそこで闇へと落ちた。 ・
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