第1話 さよなら

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 「ふぅ…食った食った!やっぱ亜紀さんのカレーは世界一だな」  騒がしい食事が終わり、侑と私は外に出ていた。  夜の散歩。  侑の家までの短い道を少し遠回りして散歩するのが私達の日課になっている。  日中の猛暑も夜になると少しは落ち着く。  夜空を見上げれば星が輝いている。  風が少し吹いていた。  「まったくうちのお父さんには参っちゃうよ……」  「いい親父さんじゃんか。お前なんて龍さんにそっくりだぜ?」  「えぇーー!?全然ッ!!似てないよ!!」  「そっくりだよ。なんつぅかなぁ……雰囲気がそっくり」  「うぅ……どうせならお母さんに似たかったなぁ……」  「まぁまぁ!人生そんなにうまくはいかないものさ」  「なによそれ……おじいちゃんみたい」  「おじいちゃんって……まだ俺は17だぜ?」  「はいはい分かってますよ!おじいちゃん」  「うるせー!」  侑をからかうのはとても面白い。  そういえばお父さんもよく侑をからかって遊んでるっけ……。なるほど。確かに私はお父さん似かもしれない……。  「龍さんと亜紀さんはさ……なんで…」  「えっ?なに?」  「いや……なんでもねぇーよ!」  「???」  侑が何を言いたかったのか、私には分からなかった。  でもそのときの侑の顔は……何故か少し、寂しそうな顔をしていた。  
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