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どれくらいの時がたったのかは分からないが、男、『捜シ者』というロールを持つ男があの異空間を抜け、目的の世界に辿り着いた時、その世界は夕刻だった。真っ赤な空が街を染め、まるで街が燃えているかのようだった。
燃える街。
男は以前にもそんな光景を見たことがあった。それは比喩ではなく本当に街が炎に包まれていた。
圧倒的熱気。叫び声。断末魔。人の焼ける臭い。
そこはまさしく地獄としか喩えようのない世界だった。
男はそんな昔に見た光景を思い出し、眩暈を感じた。
胸元に吊された十字架のペンダントに触れる。すると少し気分はよくなった。
男が降り立った場所はどうやら宗教的な建物の敷地らしかった。
確かこの国では……そうだ神社と呼ぶんだった。
神を祀る社。そこには『社神狩猪』と書かれていた。
空気が澄んでいる。そして漂う不思議な『チカラ』を感じた。魔力とは違う別の何か。
男は深呼吸し、久しぶりの地面の感覚を確かめながら、久しぶりに、『歩いた』。
ー待っていろ…ユリフェレス
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