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雷雨が鳴り響くその日、青年は道場の朽ちた窓から空を眺めていた。
ドンドンドン…
ドンドンドン…
雷鳴と共に、道場のドアを叩く音が確かに聞こえた。
ドンドンドン…
ドンドンドン…
『誰がおらぬか?。返事なければ勝手に開けさせてもらうぞ。』
ドンドンドン…
『明かりが見えたので、すまぬがこの小屋に入れてもらいたい。』
『少しの間だけでも構いません。開けて下さい。』
ドンドンドン…
今度はドアを叩く音と3人の声が聞こえた。
青年は最初、命を脅かす山賊や強盗かと不安に感じたが、理由は分からないけどそうではないと勝手に悟りドアを開けた。
『ここは小屋ではない、道場だったが、今では私の棲み家としてる場所だ。何ももてなす物もないが、それでも良ければ構わぬが』
青年はそう言いながらドアを開けた。
『申し訳ない。全然助かるぞ。言葉に甘えて少し邪魔させてもらうぞ。』
『突然の雷鳴で…この異様な空が落ち着くまで休息を取らさせて頂きたい。』
『突然の来訪に申し訳ございません。私達は宛もなく旅する者ですが…こんな天気は初めて経験するので一抹の不安さえ覚えまして…迷惑はかけないので暫くの間お世話になりますが…長くても明日には出発しますので…ご迷惑おかけします…』
3人は背丈格好は違うが、顔は驚く程同じ顔だ。
少し背の高い痩せた男がきっと長男で、後の2人は青年と同じぐらいの背丈だが1人は肉付きがよく、1人は毛深いのが特徴だが、3人とも悪そうな人物ではなさそうだ。
『旅の御方でしたか。ここの村は特に自慢できるものは何もございません。ただ果物は甘く香りが良く、他村や町からもわざわざ買いにくるぐらいです。この異様な空…私もこの村で生まれ育ちましたが…初めての事。何やら嫌な予感と共に恐怖さえ覚えます。明日明後日と言わず、身体が休まるまで何日滞在してもらっても私は構いません。どうぞ遠慮されず…さぁ、どうぞどうぞ。』
3人の男達は青年の言葉に甘え道場に入り、お礼に旅の途中で得た酒を渡し、青年も久しく酒を飲んでいなかったので、その贈り物に喜び、先日狩りで捕まえた猪の肉を肴に、囲炉裏を囲みように4人で軽く呑むことにした。
青年と旅人の3人は不思議と気が合い、特に背の高い痩せた男とは、数時間で心を許せるぐらい打ち解けた。
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