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『八重桜の流れた空』 見上げた青空 ふわふわ浮かぶ雲 もこもこの八重桜 桜が過ぎ去った今 八重桜が微笑んだ 手を少し伸ばしてみた 花びらを一匹捕まえた 手を仰いで飛ばしてみた その子はふわりと流れた しんみりした胸の奥 すっと体に冷たい水が流れた まるで溶かされた氷が流れ落ちるように まるで春の雪水が流れるように そっとすっと流れた 見上げた青空 ふわふわ浮かぶ雲 もこもこの八重桜 桜が過ぎ去った今 八重桜が微笑んだ 手を少し伸ばしてみた 花びらを一匹捕まえた 口で吹いて飛ばしてみた その子はひらりと流れた 誰にも言わない過去がある 全ての悲しみを噛み締めて あてずっぽうにさまよったあの日 八重桜の記憶 彼女に抱かれた月だけが優しく微笑みかけた 全ての事に夢中で全ての事を受け流した 青春と呼ばれた地獄さえ夢中で体当たりした 真っ暗な夜に一緒に泣いた 友達達とも離れて ただ未来と言う道なりに 一歩ずつ進んで行く 見上げてみればいつだって 優しい八重桜が咲いて 夜の闇の中見上げた 残酷さなんて忘れてしまうだろう 道なりに進んで 時々俯いてみて 時々空を見上げてみて 時々後ろを振り向いた いないはずの仲間に手を振ったりしてみる 新しい誰かが手を振りかえしてくれた 目を瞑ればいつでもあの日と同じ真夜中 何故か優しい記憶だけフワリと微笑んだ 八重桜が流れた空に 八重桜が流れた空に 僕はいつかまた帰るだろう
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