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「……ん…………」
ふと、目が覚めた。
ツンッと鼻を刺激する薬品の匂い。ピッ、ピッ、と音を鳴らす機械。
「……ここは……?」
なんとなく頭で理解するが体が着いていかない。
目を半開きにさせながら辺りを見ようとした時――
「お、起きたか楓。」
「え……?」
全く知らない声が聞こえた。
ゆっくりだが目を向けるとそこには何かを肩に担ぎながら俺を見る男がいた。
「よし、意識は回復したみたいだし、体は大丈夫か――」
そして一人で何やら口ずさみ、両手を俺に向ける。
「零術――"瞬復"」
両手を向け、何かを唱えると同時に俺の周りが心地よい風に吹かれ、体が一気に楽になった。
「…………あれ?」
目もパッチリだし、だるさも無い。
思わず体を起こすが、異常は無い。
「よぉ、久しぶりだな。」
そんな俺にさっきと同じ声が聞こえた。
黒髪が風に揺られ、爽やかに笑う男。
間違いなくイケメンに部類される男が俺を見て笑っていた。
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