忘却の少年

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「……そう……ですね」 男に言われるとカイリは苦い表情のまま頭をあげて椅子に座る。 そして同時に男が立ち上がった。 「とりあえず、だ。聞いてる途中になにか感じたら言ってくれ」 ふざけた表情は無く、鋭い目付きで俺を見ながら口を開く。 俺もそれに頷くと男も頷き、椅子に座った。 「あ、まだ言って無かったな。俺の名前は皇 大地だ。どう呼ぶかは自由にしてろ。」 「私は……必要ないですね」 「ははは……わかりました。」 皇さんが思い出したかのように自己紹介をすると、後を追うようにカイリも口を開くが、途中で辞めた。 何故かへこんだ表情になっているが、皇さんは話を続けた。 「楓。今は何年何月何日かわかるか?」 「え?」 何年何月何日って……明日は俺の誕生日だから―― 「2554年4月19日でしょ?」 これくらいはわかるだろ……と思いつつ質問に答えるが返答は無い。 あるのは皇さんが目を閉じながら首を振っている状況だけだ。 「残念ながら違う。まずこの世界に年月は無いんだ。 ……いや、"知る"人間が居ないといった方が正しいな」
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