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「……水の神都・シャルイーゼ王国。
古代王国時代から続く古の都は、もう一つのヴェニスとも呼ばれ、世界でもっとも美しい水上都市と言われている。
建物の隙間を縫うようにして流れる水路や、その両脇に立ち並ぶ建物など、街としての景観は非常に美しく……」
もはや聞き慣れた声を耳に通しながら、ふと視線を持ち上げ、空を見上げる。
視線の先にはいつもの青。
今日も変わらない空が広がっていた。
故郷を離れ、遠く異国の地までやってきても、空は変わらないらしい。 そう思って少し安堵する。
安堵。 自分では動揺していないつもりだったが、やはりどこか気負うところがあったのかもしれない。
「まぁ……無理もないか。」
「……? 急に立ち止まって、どうかしたの? お兄ちゃん。」
「いや、なんでもない。」
「そぉ? 疲れたりしてない?」
「問題ない。 このくらいは慣れてる。」
「でも、背中のお荷物……やっぱり多かったよね。 お兄ちゃんより遥かに大きいし……」
「全部[必要なもの]なんだろう? 奈々。」
「それは、そうだけど……」
「まあ、ぬいぐるみが必要なのかは疑問だが。 巨大すぎてリュックからはみ出てるぞ。」
「ひ、必要だよ? それがないと、たまに眠れない時があるんだから。」
「そういうものか……ぬいぐるみなら既に、頭の上に乗ってるだろう?」
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