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「自慢気に言ってんじゃないわよ、寂しい奴」
「わぁーん。慰めてー」
泣き真似する22歳の男……いくら見た目が良くてもドン引きだ。
「寝言は寝てから言ってくれない?」
極めて低音で不快を主張すると恭介は慌てて三文芝居を止めた。
「大抵はよしよしと撫でてくれるのに」
だがどこか不満そうだ。
「……今までどんな薄っぺらい……てかうすら寒い女と付き合ってきたわけ?」
まじでありえない。
思えばこの男は終始このおちゃらけた軽い様だった。
遊びなれた感じは振り撒きつつも決して下品ではなかったから確かに多くの女性に囲まれていた。
お坊っちゃまにありがちだが、基本的にフェミニストなのだろう。
免疫のない小娘どもがきゃあきゃあ騒ぐあのミーハーな感覚はわからないわけではなかったが、まさか美佳が恭介と付き合うことになるとは思わなかった。
美佳は透子の友達と言うだけあってこういう軽い奴は論外だったはずだから、なにか弱味を握られたんじゃなかろうかと当初は本気で心配したものだ。
だが案外幸せそうで、しっかり者の美佳が恭介に手を焼いている姿が透子の目には微笑ましく映っていた。
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