そして私は途方に暮れる

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悪びれもせず、それどころか何処か楽しそうに頷く。 「……とりあえず、一発鳩尾に入れてもいいわよね?」 本当に腹がたつと身体は震えてくるらしい。 握り締めた拳が痛いくらいだ。 「何で?楽な仕事万歳じゃない?」 お坊っちゃまめ! 「……欠片も頼んでないっての!私の生き甲斐を奪う権利はあんたにない!」 渾身の力を込めて右ストレートを繰り出したが恭介はいとも簡単にそれを交わした。 いらっ。 もうめちゃくちゃに腕を振り回す。 振り回せど振り回せど当たらない。 傍目には完全に駄々っ子だろう……本当に馬鹿馬鹿しい。 そして、情けない。 「わ…わわ……ちょ……話せばわかる。ね?」 「……っ話すことなんかないわ!」 肩で息をしながら叫ぶ。 せっかく綺麗に結い上げた髪が無惨に崩れ始めていた。 悔しくて目頭が熱くなる。 「紙とペン貸して」 「……筆談でもするの?」 「紙とペン!」 「は……はぃ」 勢いに呑まれた恭介は慌てふためきながら引き出しを漁り、高級そうな万年筆とコピー用紙を透子の前に差し出す。 サイン下さい! みたいなアフレコが似合いそうだった。
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