第一章 目覚め

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車中はずっと和菓子を食べ続けている(好物)桜樺だったが犬飼との長い沈黙に耐えきれず先に口を開いた。 『この一年で何か変わった事はあったか?』 と聞くと 「特には、ただ最近巷にてかなりの数のアヤカシが出没しているようで本当に仕事が増えていますので、今年は忙しくなると思われますが…」 それを聞いた桜樺はゲンナリしながら 『人の世に仇なすアヤカシは昨今メッキリと減ったのに、何故今にして増える必要があろうか?』 妖怪は本来、人の念や思い、正や負の感情を基に生み出される残留思念の塊のような物でそれが別の「物、生物、土地」に取り付く者であったが、昔に比べ便利になり、貧困層が減る事で昔ほど出て来る事も無く、物の買い替え、土地の整備の多い世の中になり、依り代の少なくなった現代ではなかなかお目にかかる事も少なくなった。 「人が人としての在り方について、少しづつ変化しているようで、今が当たり前になってしまっているらしいですね。私にも解り兼ねますが」 と犬飼がそう言うと 『おぬしはツマらん上に説教臭くて叶わぬわ、サッサと母屋へ向かわぬかっ!セバスチャン。』 桜樺がそう言うと 「私はセバスチャンでは御座いません。」 と返され特に喋る事も無くなってしまい再び沈黙が訪れた。
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