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「弟くん」
音姫が隣で話しかける。
ん? と返事を返すと、音姫は並木道を小走りで駆ける。
義之からは数メートル、その程度先を行った音姫は、義之の方へ向き直る。
「?」
「すぅ……」
なんか息を吸う音が聞こえた。
「おと~とく~ん!」
「!」
元気そうに叫ぶ音姫。
子供っぽく両手を顔の前に出して、高らかに。
「今日はぁー! 弟くんのカレーがー食べたいなー!!」
「…………、」
これが音姫なりの気遣い。
彼女の元気な姿を見ると、こっちまで元気になってくる。
この関係はいつまで続くのだろうか?
いや、今は止めよう。
今は、もう少しだけ――、
あと少しだけ――、
この夢を見ていよう。
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