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あやふやな世界。
そびえる大木と少女しかいない。後は闇。
これこそが夢の象徴。
「……」
黙って傍観しか出来ない彼は、目を細めた。
これも目が覚めたら忘れてしまうだろう幻想の1つ。
ならいっそのこと……、
「忘れるの?」
背後からかかる声に、細めた瞳を見開いて驚きを表現する彼。
一応他人の夢だから、身動きがとれる時と、固定カメラ状態のときがある。今回は後者らしい。
だが、声には聞き覚えがある。
「どうしているんですか?」
「ボクは、あの子の夢のボク。現実のボクとは違う、あの子の記憶のままのボクなんだ」
彼が話しているのは、厳密には違うが彼の保護者である。
多分固定カメラの前にでてこないのは、あの子の記憶の自分を見られたくないからだろう。
「それで、忘れるなって言いにきたんですか?」
「うん……」
保護者の声には覇気が感じられれない。
何か訳がある……そう感じ取った彼は、
「いいですよ、覚えておきます」
「うわ、二つ返事だ……」
「そろそろ夢が明けますからね。それに――」
一旦間を置いて、
「困ってる人は助けるって、あの人と約束しましたから」
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