知ってる?

6/7
前へ
/184ページ
次へ
なにも考えずにただひたすら走って、気づいたら家にいた。 「あら千冬。おかえり」 「ただいま…」 小さくそう言って、自分の部屋に向かう。 私の様子がいつもと違うことに、母は気づいていないようだった。 「……」 無言でベッドに倒れ込む。 「はぁっ…」 手のひらで目を覆う。 (なにを今更…) 誠のアドレスを聞かれたとき。 私の心に芽生えた、小さな小さな独占欲。 『彼女』じゃない、『幼なじみ』の、小さな抵抗。 (私にそんな権利、ないじゃない…) そう思うと、余計に虚しくなって。 私の頬を、涙が伝った。
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!

87人が本棚に入れています
本棚に追加