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味方が居なくなったと思わせる位に何十人もの敵に囲まれ、二人はやっと理解する。 「父上、これは謀られましたね…我々しか狙われておりませぬ!」 「あぁ、鈴…謀人の目星はついておる。とにかく、脱出するぞ。」 迫り来る敵を薙ぎ倒しつつ人の垣根を越えようとした瞬間 ドドーン ドーン 耳をつんざく激しい音が響く。 大砲が放たれる中、二人は取り囲まれたまま抜け出せずにいた。 「義兄上は何をしているのだ!」 鈴はとうとう怒り始め、八つ当たりに似た攻撃に変わる。 だか父からの言葉は無かった。 (まさか…そうなのか…) 父の反応から分かってしまった。 悲しいかな、義兄上は… 其れを口にしようとしたが、言葉を発する事は出来なかった。 ドドーン 大砲が飛んでくる。 何故かスローモーションの如くゆっくりと視界に丸い玉が見える。 「鈴」 父上… 何故だろうか。 何故逃げなかったのか。 何故に父上は私を庇ったのか。 (父上…) 手を伸ばして父上を掴もうとしたが、空を切った虚しい感覚しか残らず。 鈴の意識は闇へ消えた。
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