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「それで?こんな時間にこんな場所で何の話ですか?」 草木も寝静まった深夜の路地裏で、若い男が退屈そうにくずかごに腰を降ろしながら言った。 その男を見下ろす青年が一人。その視線には非難、あるいは侮蔑の念が感じられる。 「お前……今日のライブどう思う?」 「どうってねぇ……んー、そうですねぇ。僕としては特に言うことはありませんね。」 男は顎に指を当てながらわざとらしく唸る。 「そうか……ならばはっきり言う。今日の……いや、最近のお前の曲は駄曲ばかりだ。」 一刀両断。 今、青年は一言にて男の作り上げた物を切り捨てた。 しかし、その言葉に対して男は機嫌を損ねるでも無く、憤怒する事も無く、ただ「ほうほう」と呟きながら小さく頷くだけだった。 「確かにお前は昔よりも上手くなった。だがな、今のお前は自分の人気にかまけて手を抜いた自己満足の塊だ。そんなものなら下手でもひた向きに歌っていた昔の方がよっぽどマシだ。」 「……有難きお言葉、痛み入ります。」 男はくずかごから立ち上がり、仰々しく頭を下げて見せる。
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