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「……なんだ、考えを改める気になったか。」 「ん、まぁ何て言うか、少し確認したいことがありましてね。」 「何だ。」 「僕の音楽が見せかけだけに感じるなら……あなたは僕の音楽を“理解出来ています”ね?」 「は……?」 男が発した不可解な一言に眉を潜める。 その時、青年は男が右手に忍ばせていた物に気付く。 漆黒に包まれた路地裏においても銀色の鈍い輝きを放つそれは―――― 「おい……何を考えている。」 「誤解しないでくださいよ。別に自分の音楽を批判されてむかっ腹立った訳じゃありません。」 「そういう事じゃない、そんな事をしてもお前の為には……!」 「お気遣いどうも、しかしながら僕としては不確定要素は一つでも少ない方がいいもので。」 理解し難い言葉を並べながら男はにじり寄って来る。 その右手にあるのは、狂気の念に満ちたナイフ。 「あぁ、そうだ。講釈のお礼に一つ豆知識を教えてあげましょうか。」 男の目的を察知した青年は路地裏から逃げ出そうとする。 「馬鹿、止めろ!!」 だが、もう遅い。 「殺人事件ってのはですね、最低三人の人間が必要なんですよ。“殺す人間”と“殺される人間”……そして“見付ける人間”が……ね。」 男が言葉を紡いだ刹那、青年の首の中を冷たい物が横切る。 半分に割れた首、地面に崩れ落ちる体、首筋から冷たくなっていく四肢。 それが、青年が最後に味わった感覚だった。
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