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俺はどこに消えるのだろうか。
マスターが死んだ、兄弟は誰一人明確な場所がわからない。
俺達に自由はない。
マスターがいつも言ってた自由に生きろなんて、きっともう叶わない願い。
「百万」
走馬灯を流す俺の脳に冷たい声色が入る。
どうやら俺は百万で売れたらしい。
こんな俺に百万?買ったやつは馬鹿野郎なんじゃないか?
鎖を引かれて目隠しされたまま連れていかれる。
「ナツありがとねっ」
「別に構いません。でも本当にこんなヤツで良かったんですか?」
もっと頑丈そうなヤツくらい探せばいくらでもいますよ?
だってあんまり見苦しい容姿だとイライラしちゃうしっ。
…それもそうですね。
引っ張られて車に乗せられ、それでもまだ目隠しは外されず俺を挟んで無遠慮な会話が交わされる。
今日からこの人らの奴隷となるのか、俺は。
時折揺れる車の座席は中々にふんわりとしていてコイツラが中々に富豪であることが伺えた。
(最も奴隷ごときに百万出す奴等だから多少なりとも推測出来ていたが)
「ずっと俺一人で三人の世話してたから楽になるな~っ」
右隣の明るいヤツが言うと、左隣のナツという人物がクツクツと笑った。
「これからはこいつを散々使うといいですよ、これでミヤビは俺達と出掛けることが出来ますね。…着きました、行きましょう」
グイと容赦なく引かれて車を降りて歩く。
カツカツとなる二人の靴音がどことなく死刑宣告のように思えた。
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