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退屈しのぎと言われても、俺には富豪どもの思考回路がわからない。
何故こんなにも豪勢な空間が退屈なのか、何をすればしのぎになるのか。
そもそも何故わざわざ奴隷にチャンスをやったのか。
「ほら、はやく何かやってみせて下さいよ」
何にも期待してないような冷たい目で俺を見るくせに退屈しのぎに何かやれと言う。
(胸くそわりぃ王子様だなぁ)
「お言葉ですが王子様、何かとは何ですか、俺にはアンタが何一つ俺に期待をしていないように見えますが」
俺が一息に言うとナツサマは面白くないというように俺をにらんで口を尖らせた。
「そりゃあそうですよ、誰が奴隷に期待なんて出来ますか?あんたはただ俺の機嫌取りでもしてればいいんです」
ほら、そうだ。
俺をアンタの大好きなマスターだと思ってサッサと何かやりなさい。
「マスター…が…」
よろこぶこと。
マスターは俺が何かすればいつだって喜んで笑って誉めてくれた。
ハルの歌は懺悔に来る人の心を洗い流してくれるようだって言ってくれた。
だから俺は、
目の前の王子様が目を見開いて息を飲んだのがわかった。
こぼれ落ちそうな目玉が俺を見て驚愕していた。
俺はマスターのために歌った。
マスターは優しい人だからきっと俺やガキ達をこんな境遇に追いやったことを後悔しているはずだから。
マスターの後悔を洗い流すような歌を歌った。
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