物語の始まり

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家につくと母親が出迎える。 「おかえりなさい」 優しい声に 優しい顔。 自慢じゃないがたぶん他の人の親より美人だ。 「ただいま!今日もドッヂやってきた!今日もいっぱい当てて勝ったんだ!」 …嘘だらけ。 実際は逃げ回った挙げ句の負け。 俺は俗に言うマザコンだと思う。 帰るとすぐに母親にくっついている。 しかし最近は母親が風邪気味であまり相手にしてくれない。 その事情を知っているから甘えるのを我慢する そのくらいの自制心は持っていた。 夕方は俺と母親の二人しか家にはいない。 父親はカード会社に勤め、今は車で6時間ほどの 茨城県水戸市というところに単身赴任している。 2週間に1度くらい土日を利用して顔を見せに来る。 最近はなぜか頻繁で…毎週かな? 兄弟は姉が二人。 6歳上の姉は高校を中退しバイトしながら遊び歩く。 兄弟だからって悪く言うわけではなく …ブスだ。 たまに優しいがいつも喧嘩をふっかけてくるし、家出を繰り返す問題児だ。 4歳上の真ん中の姉は頭がよく私立の高校に通っている。 こちらは正直弟から見ても美人だ。 たまに気難しいが優しい姉。 こんな5人家族。 家の居心地は悪くないし貧乏ってわけでもない。 父親がいる時には家族でトランプもするし 毎年家族旅行も行く。(一番上の姉はあまり来ない) 今日も母親に甘えるのを我慢しながら夕飯の仕度を手伝い 一緒にご飯を食べる。 最近…父親が単身赴任してからかな? 母親はビールを一本空ける。 家事がある程度 楽できるから食後にすぐ寝てもいいから、つい飲んじゃうらしい。 母親は酒に酔うと 「すみちゃんって呼んで!」 なんて言い出す。 名前は寿美子。 たまに甘えだす母親にくっついてどさくさに紛れて俺も甘える。
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