第1話「紅き翼、ハサミ少女」

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真っ暗闇な部屋が おいで、おいで、と言っているみたいだった 優一は震える両膝をポンと叩き 部屋に入ることを決意した そして、 (意外と僕って度胸ないなぁ) 自分のことを再発見していた 優一は意を決めて部屋に飛び込んだ 飛び込んだといっても、恐る恐る一歩ずつゆっくりだった …心の中で優一が己の不甲斐なさに泣いていた 部屋の中は予想通り真っ暗闇で 窓はあるが板で塞がれており 光は差し込まてはいなかった 部屋に入って直ぐの場所で、優一は思った (何か灯りがあればなぁ…) 暗闇で目を凝らしても何も見えず いつまで経っても目が慣れることはなかった 「あっ!!」 優一は大声をあげてポケットに手を入れ あるものを探した そして、そのあるものを開きライトを付けた 今では、ほぼ全員の人が持っていて 最近では小学生にまで普及している 携帯電話だった 明るさ的には明るいとは言い辛い感じだが、真っ暗闇の中を照らすには十分だった 「…何なんだ、コレは」 ポツリと優一はことばをこぼした 優一の携帯電話の灯りは、そこまで高くない天井に向けられていて そこには 沢山もの鋭利な刃物の傷と 真っ赤に染まった天井が広がっていた ピリピリと 部屋の中に緊張感が広がっていた
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