第1話「紅き翼、ハサミ少女」

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携帯電話の微かな明かりを使い 優一真っ赤な天井を見る 真っ赤とはいっても その色は軽く黒ずんでいて まるで、血のようだった その天井を見てしまったが故か 優一はその天井から目を離すことができなかった しかし、前には進めていた 「うおっ!?」 優一は間抜けな声を出しながら 視界を反転させた 反転させられた つまり、派手に転んだということ 「イテテ、一体何が…」 自分が転ぶ原因になったであろう 躓いたものをケータイの明かりで照らす 「手」だった しかも、人間の 「っごめんなさい、怪我はないで…」 優一は直ぐに何度も謝る だけど、一向に向こうからの返事はない 「ちょっと、だいじょ…」 優一は手を掴みふっと持ち上げた 「うわぁぁぁぁ」 「手」は持ち上がった しかし、持ち上がったのは「手だけ」だった それより先のついているはずのものは一切なく 無惨にも、身体から切り離された 「手」だけが残っていた
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