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日もだいぶ傾き始め
方向音痴の少年は一人焦っていた
棒を倒しても倒しても
森の出口らしきもの一向に見えてこない
…こんな適当なやり方で大丈夫なわけがない
だが彼は、ひたすら棒を倒し続けた
幾つもの棒を交換し
何度も何度も倒し続けた
倒した数が3桁に差し掛かった頃
木と木の間に
土や木の茶色ではなく
葉っぱの緑ではなく
真っ白なものが見えた
それを確認すると同時に彼は駆け出した
だんだんとその白いものに近付く
近付くにつれ、そのものが大きいことに気付き
それが、コンクリートであることに気が付いた
つまり、建物である
ようやくこの「迷いの森」(優一が命名した)から出られる
その気持ち一つに彼は走る
建物の前までたどりつき
建物の全貌を見渡し
彼は両膝を着いた
窓ガラスは全て叩き割られ
壁には沢山の凹みやひび割れが生じており
このような建物を一言で言うのであれば
「廃墟」そのものであった
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