8人が本棚に入れています
本棚に追加
歩みを進めていた足がふと、止まった
そして、彼はとっさに近くの茂みに身を隠した
入り口の前に誰かが立っている
廃墟と言ってもいいようなこの建物の中に入っていこうとしているのだから優一は不信に思ったのだ
もう随分使われていないような
街からも離れて森の中にあるような
そんな建物で何をするのか想像できなかった
想像できたとしてもまあらかた悪い方のイメージしかなかった
だから、優一は一度隠れて様子を見ようと思った
隠れた茂みの葉っぱと葉っぱの間から入り口の前の人物を確認する
「えっ…?」
優一は思わず声を漏らした
見覚えのある鞄
見覚えのある制服
そして、見覚えのある
いつも教室の隅で
誰とも話すことなく
ずっと一人で過ごしていた少年
同じ高校に通い
クラスメイトの
天城終夜そのものであった
呆気にとられている間に
終夜は建物の中に入っていった
最初のコメントを投稿しよう!