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隣り合わせで談笑する。
と言ってもサトルさんの一方的な、甘くも辛くもないバンド批評だったけど。
なんで高校生バンドなんか見に来たのか、それだけ聞いた。
なんとなく、サトルさんはそう短く答えた。
やんちゃそうだけど、しっかり大人の色気もある人だと思った。
煙草をふかす口元。
見え隠れする犬歯。
笑うと無くなってしまう優しい目。
薄い顎髭を触りながら、サトルさんはビールを飲み干した。
「俺と、やんない?」
飯、食う?
ぐらいの軽いノリで聞こえた台詞。
俺は耳を疑った。
「ふっ。まぁ、とりあえずコレ聴いてみて」
渡された一枚のCDに目を落とす。
PARADE OF CHAOS
殴り書きされた横文字。
その頃日本のバンドを殆ど知らなかった俺には、聞いたことのないバンドのデモだ。
いまいち状況が掴めないまま、次のバンドが始まる。
サトルさんはフラリと居なくなった。
途端に俺の心臓はバクバク言い出して、早く手渡されたCDを聴きたい衝動に駆られた。
すげー
なんか、無性にワクワクした。
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