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洋ちゃんと伊東さんに別れを告げ、サトルさんの後を追って裏通りを歩く。
お気に入りのネットカフェに入ると、カップルシートで隣り合わせに座った。
サトルさんはいつも漫画を5冊持ってくる。
そして1冊目をペラペラめくりながら、パソコンの電源を入れる。
俺はファッション雑誌に目を落とし、いつ振られてもいい様にそんなサトルさんの行動を横目に見る。
毎度この流れだ。
「これ、佑久がいいって言ってた」
ヘッドフォンを俺の耳に押し当てて、サトルさんは画面上の再生ボタンをクリックした。
あぁ
うん
いいね。
小さなレコ屋で働く伊東さんの趣味は幅広い。
この手の音楽ならマイナーなモノでも大概手に入ると知れた店。
俺もその情報を聞き付けて中学から通い始めた。
なんとなく一言二言会話する関係になっていたから、バンドの顔合わせの時は正直驚いた。
まぁそれは伊東さんだって同じだろうけど。
でも、同時に納得もした。
サトルさんはPOCの楽曲をほぼ伊東さんに任せている。
この2人は結成当初からのメンバーだ。
伊東さんが勧めてくるバンドはどれもセンス良いから、POCの曲が格好いいのも頷ける。
複雑だけど耳に残って、自然と体が奮える様な。
ホント、天才じゃなかろうか。
いつもながら感心して曲に聴き入っていると、グワッと勢い良く頭からヘッドフォンが取り上げられた。
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