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あー
帰りてぇ。
ミンミンと煩い蝉の声に、頭がおかしくなりそうだ。
古典の補習で3日ぶりに学校に来た。
全然来たくなかったけど、留年は流石にまずい。
そんなギリギリの男が、ここに居る。
「あーもう。超ねみーよ」
休憩時間、大きく伸びをしながら誰にでもなく言う。
あと1時間もあるよ。
なんで勉強ってこんなにつまんねーの?
「あ、いたいた~」
10人程が集まった教室の前の扉から、制服を着崩したチャラい感じの男が入って来る。
確か、軽音部の山下。
「黒崎」
名前を呼ばれて体を起こす。
「なぁ、コアヴィジョン行くの?」
…CORE VISION。
「多分」
適当に返事をした。
毎年夏に行われる、デカいフェスだ。
国内外のヤバいバンドが集結する。
行くよ。
行くんだけどさ。
「お前そんな趣味だっけ?」
山下からコアヴィジョンの名前を聞くとは思わなかった。
だってコイツの好きな音楽とは少し違う。
「あぁ、兄貴に聞いた話だと、ちょっと気になるバンドがいてさ」
そして、山下はその名前を口にした。
「MINIMUM」
へぇ~。
知らねーや。
「なんか新体制らしいんだわ。新しいヴォーカルの子が超綺麗って噂」
うん
だから何?って感じなんだけど。
「なんか気になっちゃってね~。初参戦してみようと思ってさ」
で、俺を見る。
「一緒に行く?」
……
え。
「ワリ。先約が」
直ぐに断った。
ちょっと笑いそうになったし。
なんで俺?
仲良くない奴と行く気にはなれない。
特に、ミーハーな野郎とは。
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