特別授業

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「失礼しまぁす。 仁野先生ぇ?」 夏休み直後、まだまだほわんとした 気分の抜けない加藤空は、 理科の授業中、あろうことか爆睡してしまい、 理科担当の仁野丈に呼び 出されていた。 「お、来たか、加藤。」 理科準備室の棚から白衣の王子様がひょこっと顔を出す。 何を隠そう、 仁野は学年1のイケメン教師なのだ。 「で、どうしたんだ、今日は。いつも、俺の授業、まじめに受けてるじゃないか。」 少し怒ったように問う。 「ごめんなさぁい。なんか疲れてるっぽくてぇ・・・」 あえて、遊びすぎて、とは言わない。 だが、言葉が足りないのは嘘とは言わないはずだ。 「そうか、テスト近いしな。まぁ、 今度からは気をつけろよ?」 いつもの優しい顔に戻ると、空の顔を覗きこむ。 「はぁい!!」 にこっと笑って返事をする。 「じゃ、この件は終わり・・・っ と。」 仁野がするすると空に背後にまわり 、準備室の鍵を閉めた。 そして、コトリと腕時計を置く。 仁野はキスをするとき、時計をしているのが嫌いなのだ。 「おいで、空。」 空が顔をあげて仁野に近づく。 いつもの優しい顔は跡形もなくまるで空を値踏みするかのように目を細めた。 そんなくるくると表情の変わる仁野はすごくセクシーで、くらくらする 。 「空の匂いだ。」 頭一個分は違うであろう空を大きな胸にだきしめて、その髪の中に顔をうずめた。 「丈ぉ・・・くすぐったいよぅ。」 仁野の熱い吐息が首にちょっとずつかかって、照れくさいのと落ち着くのとで、空の頬は赤く染まった。 「じゃあ、顔あげてよ?」 空が顔をあげると、まつげが触れそうなくらい近くに仁野の顔があった。 2つの唇が近づき、触れ合う。 ちゅ、と小さくリップ音がなる。 「・・・っぱぁ。」 長いキス。 唇を離すと思わず大きく息をついてしまう。 「空、その顔めっちゃエロい。」 唇の端をぺろっと舐めて、仁野が言う。 空の顔が火照る。 どうしようもないくらい、はずかしい。 「今日さぁ、俺、めっちゃいい事あったんだよ。」 唐突に仁野が切り出す。 「・・・え?」 そして、ニヤっと笑う。 「授業中さぁ、彼女の寝顔、ずっと見てられたんだよね。」 空の顔は一瞬にして夕空の如く赤く染まる。 「もぉ・・・丈のバカぁ・・」
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