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サラリと言い放った上条くんに対して、私は目を見開いて固まった。それからハルに視線を送ると、ハルは隣で呑気に欠伸をしていた。このマイペース野郎。
「くるみさん、俺本気ですよ」
「っ、ちょ、ちょっと待ってください。なんか、さっきから良くわかんないし……」
「さっきの男と付き合うつもりだったんですか」
「あ、あれは――……」
上条くんは険しそうな顔つきで私に近づいてきた。
そうか、彼は私の人生初の告白シーンを聴いてたんだ。そして見事にそれを壊した。――でも、私はなんと返事をしようかきちんと考えていなかった気がする。青春がどうとかいって完全に浮かれていたのだ。告白される自分に陶酔していた。その先のことなんて完全に二の次だった。
今更そんなことが頭を巡ってきて、自分の馬鹿さと彼への申し訳なさでサッと血の気が引いた。
「くるみさん?」
「、」
「あの、もしかしてマジで――」
何も言わずに黙る私の顔を上条くんは覗き込もうとしたところで、「龍一、行くぞ」ハルが上条くんの肩を掴んだ。私から離れるのが分かった。
「ハル?」
「いいから。教室に荷物おきっぱだろ。俺帰りたいし」
「あぁ」
「じゃあな。姉ちゃん」
「……また」
ハルはすんなりと、上条くんは少しの間私の前に留まってから、立ち去った。
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