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「くるみ!玄関まで一緒にかえろー」
「うん。いいよ」
告白がなかったことになり、上条龍一との衝撃的な再会という嵐のような一日を経験した今日の私は、いつもより上の空だった。
椅子をしまって鞄を肩にかける。「亜美ー、先に廊下出てるよー?」「はいよー」友人の亜美はロッカーから何かを取り出そうとしていたので先に教室を出て待つことにした。
一つ欠伸をして教室の扉を開けると、私の目に飛び込んできたのは蜂蜜色の頭だった。
「あ、くるみさん。一緒に帰りま――」
ピシャリ。ものすごい速さで扉を閉める。
……何故、上条龍一が立っているんだ。人違いだと信じたいけど、それは彼に限ってないだろうし(ルックス的な意味で)。ていうか、なんか言い掛けてたよね……。
「くるみ?何突っ立ってんの?」
「ひっ」
いきなり後ろから声をかけられ振り向くと、亜美がキョトンとした顔で立っていた。「帰るんでしょ?」「へ――あぁ、うん!そう!」私の挙動不審な行動ぶりに、怪しいものを見るような目を向けてくる。
「忘れ物は?」
「ない」
「じゃあ出るよ」
亜美はそう言って扉を開けた。私は廊下に誰も立っていないことを願って顔をあげると、やっぱりそこには
「――くるみさん」
蜂蜜色の髪を揺らす上条くんがいた。
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